2017年アカデミー作品賞ムーンライトと占星術の密接な関係【映画感想】

ムーンライト 映画
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2017年のアカデミー賞、作品賞の発表の際に手違いでいったん別の作品(ラ・ラ・ランド)と発表されてから『ムーンライト(MOON LIGHT)』に訂正される前代未聞の事態が発生。

そんな珍事でも話題になった今回のアカデミー作品賞、ムーンライト。観てきました。

まさに、夜の海に浮かぶ揺れる月明かりのような、主人公の秘めた感情が揺らぎながら浮かび上がってくるような作品でした。

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個人的には、めちゃくちゃ良かった。暗くて重くて私的で詩的。同性への秘めた恋心を描いたLGBT映画でもあり、マイノリティ差別、麻薬中毒、貧困などなど。あらゆる問題に光を当てた作品。

万人が観て楽しめる映画ではないでしょう。おそらく大多数の人が観て「楽しい」と思えるのはラ・ラ・ランドの方かな、と思います。

そして、「ムーンライト(月明かり)」といえば、占星術的な「月」が頭に浮かんでしまう私。

映画を観終わった後にじっくり考察して、確信しました。

この脚本を書いた人(タレル・アルヴィン・マクレイニーさん)も占星術に詳しい方に違いない!

映画ムーンライトと占星術の深い関係

映画ムーンライト(MOON LIGHT)は主人公の黒人男性シャロンの少年期、ティーンネイジャー期、そして成人後の3部に分かれています。

1人の黒人男性の半生を描いた話ではあるのですが、大多数の他の映画のように「主人公の自己実現物語」ではありません。

主人公が何かを達成したり、成し遂げたり、そういった外に向かっていくストーリーではなく、主人公の感情や内面の変化を丁寧に追い続けた話です。

占星術でも、月は生まれ持った内面や感情を表します。その人が本来持っている欲求や願望も象徴し、心の奥底の不安や怖れ、また安心欲求も表すことがあります。

ちなみに太陽は、社会的な自己の獲得や自己実現を表しています。

そういった観点から、占星術的にみると映画ムーンライト(MOON LIGHT)は太陽ではなくタイトル通り「月」の物語といえるのです。

また、映画ムーンライト(MOON LIGHT)では「水」の要素が象徴的に頻繁に出てきます。

幼少期に泳ぎを教えてもらったマイアミの海、ティーンネイジャー期に想い人と一時だけ感情を分かち合えた海辺、そして、浴槽にお湯を張って浸かるシーンや、殴られた顔を氷水に浸すシーンなど。
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「水」という要素もまた、占星術では「感情」を表す要素。

流動的、染みる、満ちる、溢れる、こぼれる、涙。

水を表す言葉はすべて「感情」も表すような言葉ばかり。

ただし、主人公シャロンは口数も少なく、うつむく癖があり、自分の感情を表に語ることはありません。ナレーションで自分語りするようなこともなく、映画を観ている人は、息を飲むように主人公シャロンの瞳の動きからその感情の動きを推しはかります。

さらに映画ムーンライト(MOON LIGHT)の脚本家が占星術に詳しいはずだ。そう確信するに至った決定的な要素があります。

それは主人公シャロンの名前。

シャロンは英語では「Chiron」と書くのですが、これは占星術では「キロン」「カイロン」という「傷ついたヒーラー」と呼ばれる小惑星の名前でもあるのです。(カイロン(キロン)はもともとギリシャ神話の登場人物の名前。)

占星術でキロンが表すものは、「前世からの因縁的な傷」「傷ついた心」「癒やしと回復の努力」など。

映画ムーンライト(MOON LIGHT)も、子供の頃の心の傷や想い、感情を引きずったまま大人になる究極のトラウマ・ストーリーでもあります。

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『ムーンライト(MOON LIGHT)』のあらすじ

映画『ムーンライト(MOON LIGHT)』は、主人公の黒人男性シャロンの少年期、ティーンネイジャー期、そして成人後の3部に分かれています。それぞれの年代の主人公を演じた3人、撮影の時はまったく顔を合わせないようにスケジュールをずらされていたそう。それにも関わらず、仕草や表情、まとう雰囲気は同じに見えるのだから、なんだか不思議です。

1.少年期(リトル)
主人公のシャロンはリトルというあだ名をつけられ、いじめられっ子。学校ではクラスメートのケヴィンだけが仲良く接してくれる。ヒステリックな母親は恋人とドラッグに溺れており、家庭にも学校にも居場所を感じられずにいる主人公。そんな時に出会ったキューバ人のクラック・コカイン売人であるフアン(マハーシャラ・アリ)。海で泳ぎを教えてもらったり、フアンがガールフレンドと暮らす家で食事をしたりするなかで心をひらいていく。
しかしある日、フアンがコカインを売っている顧客が母親の恋人だということを知ってしまい、そこで主人公シャロンはフアンから距離を置くようになる。

2.ティンネイジャー期(シャロン)
ティーンネイジャーとなったシャロン。いまだに学校では陰湿ないじめにあっており、母親の薬物中毒は悪化する一方。
同級生のケヴィンへの好意に自分でも気がつきはじめている様子。ある夜、ケヴィンはシャロンを訪ねて、彼の家近くにあるビーチを訪れる。その夜のビーチで2人はお互いの想いや体を重ね合う。しかし後日、いじめの中心になっていたリーダー、テレルの命令で、ケヴィンはシャロンを倒れるまで殴ってしまう。
暴行されたシャロンは翌日、ソーシャル・ワーカーに殴った相手の名前を言うように迫られるが、口を閉ざす。
その日を境に何かが覚醒し変わったシャロン。翌日登校したシャロンは、前を向き堂々とした態度で教室に向かい、無防備なテレル(いじめの中心人物)の背中を椅子で殴りつけ、パトカーで連れて行かれてしまう。

3.成人期(ブラック)
おとなになったシャロンは、アトランタの少年院から出た後そのままドラッグの売人として生計を立てるようになる。弱い自分を隠すように身体を鍛え、ゴールドのピアスや金歯(グリル)、ネックレスで武装する。
ある夜、彼はケヴィンから突然電話を受け、自分が食堂で働いているマイアミを訪ねてほしいこと、そして過去の出来事を謝罪したいことを伝えられる。

『ムーンライト(MOON LIGHT)』は普遍的な恋愛映画

「恋する惑星」などの映画で有名なウォン・カーウァイ監督の作品に影響を受けていると公言していることもあり、まるでドキュメンタリーを観ているかのような揺れるカメラワークや、登場人物のつかみどころのない象徴的なセリフのやり取りなどは似ている部分もありました。

前面にカーテンや物が置かれた構図は、まるでフェルメールの絵画のよう。鑑賞者が物陰からそっと覗いているような、後ろめたさを秘めた感覚を覚えます。
ムーンライト 構図

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感情が大きくゆれ動くシーンでは、カメラもドキュメンタリーフィルムのようにいっしょに動く臨場感。

そして、フアンがシャロンに泳ぎを教えているシーンでは、画面の下半分が海の中に浸かり、まるで自分もいっしょに海に入っているかのように思えてきます。

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そんな自分も映画の中の世界にいるような感覚を覚える演出が、自然と登場人物への心の距離感をぐっと近づけてくれているような気がしました。

そして、男同士の恋愛を描いた映画、というと、少し特異な印象を受けてしまいますが、映画を観終わった後は「なんてピュアな恋愛映画なんだ…」と心にじんわりきました。

だって、主人公のシャロンは幼少期から大人になるまで、ずっとたった1人だけが心のなかにいて、その想いを誰に話すこともなく秘めたまま育ってきたわけです。

最後の最後まで、シャロンは自分がケヴィンのことをどう思っているかは口に出しません。
「好き」「愛してる」、そんなセリフは一切出てきません。

大人になったシャロンに突然電話をかけてきたケヴィン。

「聞かせたい歌があるんだ」

と告げた歌。

2人がケヴィンの働く食堂で再会した後、ケヴィンが流した歌。それはまさにケヴィンのシャロンに対する「答え」でもありました。バーバラ・ルイス(Barbara Lewis)のHELLO STRANGER (ハロー・ストレンジャー)です。

別れた恋人と再会した複雑な気持ちを歌った曲。

いやいや、ケヴィン、どんなベタな演出じゃ。

と正直ツッコみたくなりました。

でも、主人公のシャロンは外見はゴリゴリのオラついた兄貴ではありますが、中身はピュアな乙女ですから、きっとそこで最大級の胸キュンを感じてしまったことでしょう。

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そうやって考えてみれば、『ムーンライト(MOON LIGHT)』は幼少期から成人するまでひたすら相手への特別な思いを秘めてきて最後の最後に成就する普遍的な恋愛映画なのかもしれません。

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